歯が埋まって出てこない、ちょっと特殊な場合の治療例をご紹介します。
・主訴(矯正を受けたいと思った理由):永久歯が生えてこない
・診断名:上顎両側犬歯埋伏を伴う上下顎前突
・初診時年齢:12歳7か月
・治療に使った装置:Ⅰ期治療…リンガルアーチ(LA)
Ⅱ期治療…マルチブラケットシステム(MBS)、トランスパラタルアーチ(TPA)、ヘッドギア(HG)
・抜歯部位:上下左右第1小臼歯4本抜歯
・治療期間:Ⅰ期治療…7か月
Ⅱ期治療…2年2カ月
・治療費概算:Ⅰ期治療38万円ほど(開窓手術費を含む)、Ⅱ期治療合わせて90万円ほど(*当院の治療費に換算しての概算です)
・最初にCTを撮影したところ左上の犬歯は隣の側切歯の根を吸収していました。また、犬歯は引っ張り出してこれたものの入る場所が足らず、隣の歯を抜歯することになりました。
結果として犬歯はしっかり萌出し、ガタガタもなく口元もきれいに治りましたが、側切歯の根は吸収されたままで歯の状態を長期に経過観察しています。
引っ張り出してきた犬歯の歯茎もほかの歯のようにはついてこず、歯肉退縮のような状態になっています。
埋伏歯やシビアなガタガタさんの場合この歯茎の状態も治療後になかなか最初からきれいな歯並びの人のようにはならないのが残念なところです。
ただ、こういった歯が埋まった状態の方の場合となりの歯の歯根吸収が進んで痛みが出てきたり神経が死んでしまうこともあり、早めの治療が望ましいと思います。
→埋伏の治療のリスク:歯を引っ張り出すために外科処置を併用するので口腔外科との連携が必要になります。平日にお休みをとって大きな病院を受診していただく必要があります。外科処置自体のリスクもあります。また、歯を引っ張りだしてくるだけでなくその後その歯を歯として機能させるために続けての矯正治療が必要になります。埋まっている歯が出てこない可能性や、他の歯を抜かないといけなくなる場合もあり治療は多岐にわたります。
一般的なリスクはこちら
Ⅰ期治療
初めて相談に来られた時の歯並びです。ほぼ全部永久歯が生えそろっていますが、上の糸切り歯が生えていません。
その時のレントゲンです。糸切り歯の生える方向が悪く、隣の歯にあたっているように思えます。
このままほっておいても生えてこないばかりか隣の歯が吸収されて根っこが短くなってしまうことがあるので、矯正治療で歯をいい位置に動かして出してきてあげることになりました。
引っ張り出している途中です。埋まっている歯に装置をつけてゆっくり歯茎の外に引っ張り出してあげます。
埋まっていた歯の頭が出てきました。歯の向きもだいぶ良くなっています。
ただ、このままでは生えたとしてもガタガタになってしまうため、2期治療(大人の歯の治療)を開始しました。
Ⅱ期治療
ブラケットをつけて、隙間を閉じながら歯をいい位置に移動させていきます。
治療終了時です。埋まっていた歯がきれいに並びました。
最初からの治療経過です。このように、症例によっては矯正治療の力で埋まっていて出てこれない歯を出してあげることが出来る場合があります。